一人は、若干16歳で執筆した小説がジャンプ小説・ノンフィクション大賞に輝き、その後も黒く暗い舞台の中に白く光る一粒の優しさと悲哀を描くような作品を次々に発表。ジャンルを変える際は執筆名も変え、映像化された小説は多数、100万部を超える作品も持つ、乙一、山白朝子、中田永一こと安達寛高。
一人は、デビュー当時、現役女子高生の作家ではないかと噂され、時代の空気を映し出したような十代の心と体を赤裸々な大胆さと繊細な観察眼で特有の刹那として長らく描いてきた。表現者としての貪欲さで、小説のみならず映像作品やイベントを通し現実とそこにある人々の感性を浮き彫りにする桜井亜美。
そしてもう一人は、デビュー以来、その素性だけでなく自ら発するコメントすら出さず、三島由紀夫賞受賞時は同賞初の受賞者式典欠席。その比類なき文圧と誰もが想像だにしない世界と展開で読者を圧倒し、メッセージはすべて生み出す作品の中にという姿勢を貫いてきた覆面作家・舞城王太郎。
この三人の共通点、監督として映像作品・・・映画を作り出す、ということ。もともと舞城が発案のクリエイティブ集団“リアルコーヒー”。そこにジョインしてきたのが、安達、桜井だ。三人の作家が脚本・監督・編集まですべて自らで、製作・制作・配給・宣伝すべてリアルコーヒーで担っている。
集団の名前にもなっている“コーヒー”。好き嫌いはあれど誰しもどこかで接したことのある飲み物だ。そのありふれたアイコンから三人の想像が膨らんでいく。一人は“眠れない”ことのきっかけに。一人は若い男女が“微笑みあう”象徴に。もう一人は“休む”ことへの合図に。それぞれのカップに淹れた濃く茶色い液体は、それ自身が持つ“苦さ”“温かさ”そしてそのアロマ(香り)が意味として包含する“ゆっくりする“ことを、さまざまなシチュエーションのさまざまな人間が手に口にすることによりまったく違った形で物語の中に沁み込ませていく。三者三様に、同じアイコンからそれぞれの作家性豊かな“上手にゆっくりできない”人々の心の機微を描き出しているオムニバス映画となった。
乙一、中田永一、山白朝子の名義で活動する小説家。映画化された小説は多数。写真集の文・構成を担当するなど多彩に活躍している。学生時代から自主映画を撮り続け、執筆と並行して監督業にも精力的に取り組んでいる。監督作に、『一周忌物語』、3D映画『立体東京』など。
主な作品に、「GOTH リストカット事件」(乙一名義/角川書店)、「くちびるに歌を」(中田永一名義/小学館)など。
恋人の手術が終わるのを待っていた青年は、深夜の病院で長い黒髪の少女に出会う。 彼女はお父さんが飲んでいたコーヒーをこっそり飲んでしまい、眠れなくなってしまったのだという。青年は、少女が眠くなるまで、暇つぶしにつきあうことになるが…。
1985年生まれ。独特な佇まいと繊細な演技が高く評価をされる俳優。2007年香港アジア映画祭コンペティション部門でグランプリ受賞の主演作『隼』(2005年/市井昌秀監督)や第13回釜山国際映画祭でグランプリ受賞の『無防備』(2007年/同監督)により世界的にも注目度が高まっている。今作の撮影を手がけた金子雅和監督作『辺境幻想』(2010年)の中の一編『失はれる物語』(原作:乙一)でも主演として半身不随の青年を好演。その他、『お姉ちゃん、弟といく』(2006年/吉田浩太監督)、『夜が終わる場所』(2011年/宮崎大祐監督)など多数出演。また『ジョーカー』(CX)や『忍びの里殺人事件』(NHK)などのTVドラマなどにも出演。
2002年生まれ。その年齢からは信じがたい落ち着きと妖艶さを備えた若き女優。いわゆる子供らしい役もさることながら、今作のような一種の空気感をまとう難しい役を演じきる実力を備え持つ。今後、さらなる成長が非常に楽しみな若手女優のひとりである。主な出演作として、『環境超人エコガインダーOX』(2012年/キッズステーション)、『東京全力少女』(2012/NTV)、『三毛猫ホームズの推理』(2012年/ NTV)、『クロユリ団地』(2013年/中田秀夫監督)、『潜入探偵トカゲ』(2013年/TBS)など。
1996年に小説家デビュー。現在は小説執筆のみならず、映像制作も精力的に活動。映画『虹の女神 Rainbow Song』原案・共同脚本、映画『FUKUSHIMA DAY』監督(共に岩井俊二プロデュース)、WOWOW「上野樹里の5つの鞄」の一編『ある朝、ひなたは突然に』脚本など。
主な作品に、「イノセント ワールド」(幻冬舎)、「MADE IN HEAVEN」(幻冬舎)など。
染谷は、自分の部屋に通ってくる宮本との関係に小さな溝を感じる。宮本は世界と彼女を繋いでくれた無二の存在だった。離れてしまった心をとり戻すために、大切な思い出である花火をもう一度しようとせがむ染谷。だが、彼が彼女に告げた言葉は……。
1986年生まれ。TVドラマ『美少女戦士セーラームーン』(2003年/ TBS)のセーラーヴィーナス役で女優デビュー。近年では、『ネオン蝶』(2013年/サトウトシキ監督)、『Miss ZOMBIE』(2013年/SABU監督)、『横たわる彼女』(2014年/戸田彬弘監督)など、映画主演が立て続き、映画界からも注目を浴びている。主な映画出演作として、映画『僕は妹に恋をする』(2007年/安藤尋監督)、『容疑者Xの献身』(2008年/西谷弘監督)、『僕等がいた(前・後編)』(2012年/三木孝浩監督)、『武蔵線の姉妹』(2012年/山本淳一監督)など多数。その他、TVドラマ、CM、舞台、バラエティなど様々な分野で活躍中。
1990年生まれ。2007年アミューズ30周年オーディションにて審査員特別賞受賞。主なTVドラマ出演作に『イノセント・ラブ』(2008年/CX)、『東京DOGS』(2009年/CX)、『満福少女ドラゴネット』(2010年/TVK)、『農ドル!』(2010年/NHK)、『チキンレース』(2013年/WOWOW)など。舞台では、美輪明宏が演出・美術・主演の『毛皮のマリー』(2009年)で美少年・欣也役を演じたほか、及川拓郎演出『BLACK PEARL』(2010年)などにも出演。更なる活躍が期待される注目株の俳優。映画出演作は、『婚前特急』(2011年/前田弘二監督)、『カバディーン!!!!!!!~嗚呼・花吹雪高校篇~ 』(2014年/小原剛監督)など。現在、伊村製作所としてコントユニットでも活動中。
三島由紀夫賞受賞の覆面作家。その活動は文学に留まらず、特撮短編映画『巨神兵東京に現わる』の言葉担当、ウルトラジャンプ連載中の漫画「バイオーグ・トリニティ」を漫画家・大暮維人と展開、「日本アニメ(ーター)見本市」の一作、アニメ『龍の歯医者』監督など多岐に及ぶ。
主な作品に、「阿修羅ガール」(新潮社)、「好き好き大好き超愛してる。」(講談社文庫)。
ある日、会社の応接室で大怪我をしているのを発見された黒須だが、休日だというのに仕事をし続けている。同僚の濱崎が出す意味不明なちょっかいを鬱陶しく思いながら。だが次第に、現実と非現実を行き来する黒須の心が揺さぶられ始めて……。
1974年生まれ。大学卒業後、お笑いタレントとして活動。2000年より、劇団『サモ・アリナンズ』に入団。2007年よりコントユニット『表現・さわやか』に参加、これまでに出演した舞台作品は多数。2009年からNHK教育で放送中の教育エンターテイメント番組『みいつけた!』のサボさん役を担当している。主な出演作は、『赤線』(2004年/奥秀太郎監督) 、『パッチギ LOVE&PEACE』(2007年/井筒和幸監督)。『医龍~Team Medical Dragon3』(2010年/CX)、『ごめんね青春!』(2014年/TBS)など。また『ナンダカベロニカ』(2014年/NHK Eテレ)などテレビアニメの声優としても活動している。
1992年生まれ。舞台、ドラマ、映画、CMなどさまざまな分野で活躍している注目の新鋭。ドラマ『小公女セイラ』(2009年/TBS)でデビュー後、話題作に多数参加。岩井秀人、前田司郎、山内ケンジなど演出家から支持され、舞台『サナギネ』(2014年)で主演するなど、舞台女優としても活躍。近年の映画出演作は、『銀の匙 Silver Spoon』(2014年/吉田恵輔監督)、『MIRACLEデビクロくんの恋と魔法』(2014年/犬童一心監督)、『サムライフ』(2015年/森谷雄監督)、『ストレイヤーズクロニクル』(2015年6月27日公開/瀬々敬久監督)、『ピンクとグレー』(2016年公開予定/行定勲監督)など、これから活躍がより一層期待されている。
A5版・80ページ